松浦鍼灸大学堂院長の松浦穣士(まつうらじょうじ)と申します。

この度、ホームページのリニューアルに伴い、ブログを開設することとなりました!もっと鍼灸のことを知ってもらいたい、東洋医学や生活に役立つツボなどの紹介をしていく予定なので是非覗きに来てください🖥️

今回、このブログを読んでくれている人は、一度は当院にて鍼灸を受けたことがある患者さんが多いと思います。現在の体調はいかがでしょうか?これから皆様の鍼灸に対しての素朴な疑問や、どのような時に私たちの鍼灸院を頼っていただいたら良いかをお伝えできればと思っています。また痛みや症状がある方は、いつでもご連絡くださいませ。

そして今回、このブログにたどり着いていただいた皆さま初めまして。今回のタイトル通り、『鍼灸院には行ってみたいけど、どこの鍼灸院が自分に合うだろう?そもそも鍼灸が自分の症状に合うのか…』と不安や疑問がある方もおられると思います。

誰にでも、どんな体験でも「初めて」がありますが、僕たちが提供する「鍼灸」においては、まだまだナゾ?な部分が多く「初めての鍼灸」の重い扉を開くにも勇気がいるのも承知しています。今回はそんな皆様に、少しでも鍼灸のことを知っていただけるようお伝えしたいと思います。

○当院の鍼灸治療の流れ

大まかな当院の治療の流れは、①問診、②身体診察(検査)、③鍼・灸・手技療法による施術の流れになります。

1.問診(医療面接とも言います。)

まずは患者さんの患っている病気や症状を理解するために問診いたします。この問診は鍼灸院によって大きく変わりますが、当院では西洋医学・東洋医学の両方の視点から行います。

両者を組み合わせた視点により、患者さんの身体の状態だけでなく、精神的・心理的状態、社会的状態の問題点を把握することにつながります。具体的には症状の部位や種類、発症した経緯、これまでの経過などの西洋医学を中心とした情報と、飲食や消化の状態、睡眠や感情など東洋医学的な情報を収集します。これらを総合して、症状の改善に有効な治療法を判断するところから始まります。

2.検査(身体診察)

次に問診で得られた情報をもとに検査(身体診察)を行います。当院が行う西洋医学的な検査には、血圧測定や触診、聴診、打診、関節可動域などがあります。また各疾患やスポーツ障害に必要な徒手検査法も行います。鍼灸師はX線やC T、M R I、血液検査などの検査を行うことはできませんが、必要な時には連携する整形外科や内科など信頼できる病院をご紹介いたします。

これに対し東洋医学的な検査には、顔色や舌の色、形態などの視覚的な情報を得る望診、声の大小や高低などの聴覚的な情報と、臭いによる嗅覚的な情報を得る聞診、腹部(腹診)、手首の脈(脈診)に触れて情報を得る切診があります。これらの診察方法は、現代医療で用いられる検査機器がない時代より、身体の内面や体表から発せられる微細な情報により、身体や心の状態を読み取る診察法です。

当院ではこれに加えて、特殊な機械を使った“良導絡自律神経調整療法”を行っています。この方法は、手首・足首にある経穴に微弱な電流を流して、全身をめぐる12本の経絡の虚実を測定できます。詳細は別ページにも記載しますが、各疾患の治療あるいは予防、健康増進を目的とする治療法であり、自律神経調整療法を行うことができます。

3.鍼灸による施術

問診と身体診察によって得た情報をもとに、患者の病態や体調から鍼灸治療の方針を決定します。例えば当院の主となる『全身治療』では、東洋医学的な診断をもとに、症状がある部位から離れた経穴(ツボ)を用いる遠隔選穴と、症状や病態のある局所やその周囲の配穴を用いる近位選穴、これらをその症状によって最善の配穴(経穴の組み合わせ)を考え、針と灸を行います。治療の最後には、全身の疲れを取る目的で、5分ほどのマッサージも行います。治療時間は問診から施術終わりまで約60分です。

それに対して『局所治療』は、主にスポーツ障害の治療で行う治療法で、西洋医学的考えをもとに、筋や神経、血管などを考慮して鍼を中心に施術し、こちらも最後にマッサージを行います。治療時間は問診から施術終わりまで約45分です。

○1度の通院で良くなる?通うならどれくらいのペースで通う必要?

鍼灸治療の対象となる症状は様々で、1回の治療で改善する症状もあれば、繰り返し治療することで治る症状、長期的なコントロールが目的となる症状もあります。

一概に言うことは難しいですが、受傷や発症原因がはっきりしている症状は、1回または数回の治療で緩解することが多いです。例えば軽症の捻挫やギックリ腰(急性腰痛)です。

年齢に伴う筋肉の退行変性(いわゆる老化も含む)によって起こる運動器疾患や自律神経症状(めまいや頭痛、不眠症など)などは、繰り返し治療を行うことで効果が得られることが多いです。日常生活や仕事、スポーツによる一定の動作負荷が原因の場合には、生活習慣の見直し、ストレッチや筋力強化などセルフケアの指導も提案いたします。

最近では慢性疼痛や心の問題など、西洋医学の治療でも難しいケースが増えています。このようなケースでは、症状があったとしても生活を維持させることや、長期的なコントロールを目的として、鍼灸治療が選ばれることが増えています。内服薬に頼らない、または薬の量や種類を減らしたい方など、一度当院にご相談ください。今後、どのような疾患、症状に対して鍼灸の効果があるかは、このブログでご紹介していく予定ですので楽しみにしていてください。

○そもそも鍼とはどのようなもの?一般的な長さや太さは?

日本国内で使用する鍼の素材はステンレス製で、長さは7〜90mm、太さは0.10〜0.30mmが主流です。ただし、当院では、長さ40mm太さ0.18mm(寸3–2番)と、長さ50mm太さ0.20mm(寸6–3番)の2種類がメインです。患者さんの体型や、鍼の経験値、刺激部位への深度や強度により使い分けいたします。例えば、顔面部であれば細く短い鍼、腰や臀部であればやや長く太い鍼を用います。もちろん、鍼が初めての人や子供には、さらに短く細い鍼も用意しています。

また、当院で使用する鍼は全てディスポーサブル鍼(使い捨て)ですのでご安心ください。1回の治療後、全て廃棄します。

○鍼に電気を流す方法とは?

 鍼に電気を流す治療法を「低周波鍼通電療法」と呼びます。身体に鍼を刺入し、専用の鍼電極低周波治療器から電気を流す方法です。当院でもほとんどの患者さんに使用します。

①筋肉の緊張が強い場合(主にスポーツ障害)

②筋肉を動かしてむくみの解消

③痛みやしびれに対する治療

④自律神経を介して治療効果を得たい場合

主にこれらの疾患・症状に効果を発揮します。低周波治療器にも様々な種類がありますが、基本的には刺激周波数(1〜3Hz)と刺激時間(10〜15分)を設定し、電流量は患者さんに聞きながら手動で上げていく構造になっています。

実際の鍼通電は、経穴や筋肉、神経の近く、反応点(圧診点や運動点、トリガーポイント)などに鍼を2本刺入し、低周波治療器に繋がれたコードのクリップで鍼を挟みます。鍼を刺入する部位や刺激時間は症状や治療目的によって決定します。

鍼に電気を流すと聞くと痛いんじゃないか?と心配される人もおられますが、決して強い刺激を入れるわけではありませんのでご安心ください。慣れてくると心地よく、気持ちの良い刺激であり皆様に喜んでいただいております。

○お灸も初めてですがどのようなものですか?

 お灸はモグサを使用し、原料はヨモギからできています。ヨモギはキク科の多年草です。世界では約250種類、日本では約30種類あると言われています。

 お灸の種類も様々あり、治療目的に合わせ、モグサの形状を変えたり、器具を使用したりします。歴史的には紀元前からお灸についての記録が見られます。当院で行なっているお灸の方法を中心にここで紹介します。

お灸を据えることを施灸と言います。お灸は伝統的な治療法として日本のみならず、中国、韓国など東アジアを中心に実施されています。お灸というと皆さんはどのようなイメージですか?「熱い」「痕が残る」などのイメージはありませんか。現在、世界的には「熱くない」「痕が残らない」お灸が主流です。施灸方法によって直接灸、間接灸に分けられます。

1.直接灸

 モグサを皮膚に直接置いて施灸する方法で、主にツボを点(point)として捉える灸法に用いることから点灸用モグサ表1を使用します。

直接灸に用いるモグサの形状と大きさは、患者さんの体質や病態に合わせて、必要な熱量を伝えるために、施術者の指先で調節します。大きい順番に大豆大(大豆の大きさ)、小豆大(小豆)、米粒大(米粒)、ゴマ粒大と言います。当院では半米粒大(米粒半分の大きさ)に捻って行います。1つ1つ指先で捻りだすモグサのことを艾炷(がいしゅ)、患者さんの身体にモグサを置くことを「艾炷を立てる」と言います。モグサを数える単位を(そう)と言い、同じツボへ3回繰り返してすえることを3壮すえると言います。院内の会話で「この症状があるから足三里と三陰交は5壮すえよう」など聞いたことのある患者さんも多いと思います。当院では1つのツボに夏場は3〜5壮、冬場は5〜7壮と使い分けています。

〈直接灸の種類〉

知熱灸

火が皮膚に到達する前にモグサを取り除く方法。皮膚で熱を感じたら、施術者が素早くモグサを取り除きます。モグサの形状と大きさは患者さんの病態によって決めます。

8分灸(8ぶきゅう)

当院で主になる施灸の方法です。火が皮膚に近づく途中で消火します。モグサを8割燃焼させたところで消火すると8分灸、9割で消火すると9分灸といいます。上記の知熱灸に含まれます。

透熱灸

皮膚に置いたモグサをすべて燃やします。もちろん全てを燃やしますのでモグサが大きいと火傷をします。当院ではほとんど行わない方法ですが、指先など狭い箇所に行いたいときは、モグサの形状を糸状大(糸のように細く)に調節して、施術者の技量によって熱を心地よく感じるようにすえることもできます。

 

2.間接灸

 モグサを皮膚に直接置かず、間接的に施灸します。温かい感覚を引き出す灸法から温灸とも言われています。温灸用モグサ表1を使用します。

〈間接灸の種類〉

台座灸

紙で作られた台座に、モグサを取り付けた構造で、モグサが皮膚に直接触れません。台座の中心にモグサの燃焼熱が皮膚に伝わるための穴が開いています。シートから台座灸を外し、モグサの先へライターなどで点火後、皮膚に貼りつけて施灸するので患者さん本人でも自宅で使用できます。当院で販売しているのもこのタイプで、次の来院まで期間が開くときや自宅でもお灸をしてもらいたい時にお勧めしています。種類によって温熱の強弱を変えられるので、ご自身に合った温度の台座灸を販売いたします。

円筒灸

 厚紙で作られた円筒にモグサを詰めた構造です。施灸時に、専用の道具でモグサを筒から押し出した後、皮膚に貼りつけて点火します。モグサと皮膚の間に空間があるため、モグサの燃焼熱が直接皮膚に触れずに温まります。

棒灸

モグサを紙で巻き棒状にした棒モグサの一端に点火し、モグサの燃焼熱(輻射熱)を皮膚にかざして温めます。棒モグサの燃焼部を皮膚から離したり、近づけたりして温熱の強弱を調節します。当院では、妊婦さんの逆子を矯正する時、足の小指に施灸するときに良く使用します。

表1.モグサの種別と性質

種類点灸用モグサ温灸用モグサ
性質着火後、速やかに燃焼します。微量のモグサで、糸状、粒状など指先で成形が容易にできます。主に直接灸に用いられます。着火後、ゆっくり燃焼します。高い燃焼温度と長い燃焼時間で、熱量を多く必要とする施灸法、主に間接灸に用いられます。
色・明るさ淡黄色・明るい緑茶色・暗い

今回は当院の基本的な“はり”“きゅう”について紹介いたしました。今後も鍼灸の治療法、東洋医学のフシギ、こんな症状にはこのツボなど、いろいろ紹介していく予定です。どんな疑問でも結構ですので知りたいことがありましたら是非ご連絡ください!